臨床神経学

症例報告

1-ブロモプロパン中毒による失調性歩行障害を呈した1例

森嶋 悠人1), 深尾 統子1), 土屋 舞1), 羽田 貴礼1), 新藤 和雅1)*, 瀧山 嘉久1)

Corresponding author: 山梨大学医学部神経内科学講座〔〒409-3898 山梨県中央市下河東1110〕
1) 山梨大学医学部神経内科学講座

症例は55歳男性.9ヶ月前から両下肢優位の感覚障害,歩行障害を認め,緩徐に進行した為に当院に入院した.神経学的所見では,下肢優位の四肢異常感覚,両下肢痙縮,開脚歩行を認めた.検査では,軽度高Cl血症と腓骨神経伝導速度低下を認めたが,頭部・脊椎MRIや髄液検査は異常なかった.職歴聴取で,1-ブロモプロパン(1-bromopropane,以下1-BPと略記)を用いた金属洗浄業務の長期間従事が判明し,血清臭素を測定したところ175.6mg/l(基準値:5以下)と上昇を認め1-BP中毒と診断した.曝露回避で血清臭素は低下したが歩行障害は残存した.原因不明の四肢感覚障害,歩行障害では,職歴を確認し血清臭素測定を検討する必要があると考えられた.
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(臨床神経, 63:27−30, 2023)
key words:1-ブロモプロパン,高臭素血症,失調性歩行障害,痙縮,労働衛生管理

(受付日:2022年7月27日)