臨床神経学

症例報告

心不全と心伝導障害が先行した抗ミトコンドリアM2抗体陽性筋炎の69歳男性例

大垣 圭太郎1), 藤田 裕明1)* , 国分 則人1), 濱口 眞衣1), 西野 一三2)3), 鈴木 圭輔1)

Corresponding author: 獨協医科大学脳神経内科〔〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880〕
1) 獨協医科大学脳神経内科
2) 国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第一部
3) 国立精神・神経医療研究センターメディカルゲノム・センターゲノム診療開発部

症例は69歳男性.2年前より心不全症状が出現し,洞不全症候群に対しペースメーカー植込み術を受けた.1年前より歩行時に両下肢の疲労感が出現した.近位筋の筋力低下,腰椎前弯の増強,筋CTで胸腰椎傍脊柱筋,腹直筋,ヒラメ筋の萎縮を認めた.血清CK 値は1,455U/l であった.筋病理では軽度から中等度の筋線維の大小不同,壊死再生線維を認めたが,細胞浸潤は無く,HLA-ABCの発現は僅かであった.抗ミトコンドリアM2抗体が陽性であり,プレドニゾロンの投与により臨床所見の改善を得た.抗ミトコンドリアM2抗体陽性筋炎は筋生検で診断が確定し難く,致死的な心合併症が先行・合併しうることに注意が必要である.
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(臨床神経, 62:135−139, 2022)
key words:抗ミトコンドリアM2抗体陽性筋炎,心伝導障害,心不全,体幹筋罹患,ヒラメ筋

(受付日:2021年5月19日)