臨床神経学

短報

ギラン・バレー症候群様に発症したヒトアジュバント病の1例

竹ノ内 晃之1), 細井 泰志1)*, 渡邊 一樹1), 高嶋 浩嗣1), 武内 智康1)2), 宮嶋 裕明1)

Corresponding author: 浜松医科大学内科学第一〔〒433-3192 静岡県浜松市東区半田山1-20-1〕
1)浜松医科大学内科学第一
2)浜松医科大学生体機能イメージング研究室

症例は69歳女性.50年前,美容目的で両側乳房にシリコンインプラントを注入した.入院16日前から両下肢の異常感覚と筋力低下を自覚し,その後両上肢の異常感覚と筋力低下,複視,右顔面神経麻痺が出現し当科に入院した.末梢神経伝導検査で,遠位潜時延長,運動・感覚神経伝導速度低下を認めた.ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome; GBS)を疑い免疫グロブリン大量静注療法を行ったが改善せず,ヒトアジュバント病を考え,両側乳房の異物除去術を行った.術後,徐々に神経症状は改善し,GBS様の急性経過で発症したヒトアジュバント病と診断した.シリコンやパラフィンといったアジュバント活性を持つ体内異物のある患者が神経症状を呈した際,ヒトアジュバント病を鑑別に挙げる必要がある.
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(臨床神経, 60:358−361, 2020)
key words:ヒトアジュバント病,ギラン・バレー症候群,サルコイドーシス

(受付日:2019年9月5日)