臨床神経学

症例報告

複数の免疫療法にも関わらず再燃を反復し橋本脳症が疑われた1例

原田 しずか1)2)*, 稲富 雄一郎2), 中島 誠1), 米原 敏郎2)

Corresponding author: 熊本大学大学院生命科学研究部脳神経内科学分野〔〒8608556 熊本市中央区本荘111〕
1)熊本大学大学院生命科学研究部脳神経内科学分野
2)済生会熊本病院脳神経内科

甲状腺機能低下症の既往がある初発時51歳,男性.全身倦怠,頭痛の数日後に急激に昏睡となった.入院時JCS III-200で局在症候は認めなかった.血清抗サイログロブリン抗体>4,000IU/ml,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体265IU/mlであった.抗神経抗体検索は不十分であったが抗甲状腺抗体陽性により橋本脳症を疑った.ステロイドパルス療法により軽快したが,プレドニゾロン漸減中に計7回再燃した.各再燃時とも髄液所見,頭部MRIでは異常なし.血漿交換,アザチオプリンを追加し発症2年で急性症候再燃は収束したが,注意,記憶障害は残存した.橋本脳症では再燃を繰り返す事があり,経過観察が必要である.
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(臨床神経, 60:200−205, 2020)
key words:橋本脳症,抗サイログロブリン抗体,ステロイド,血漿交換療法,アザチオプリン

(受付日:2019年8月28日)