臨床神経学

症例報告

血栓回収により得られた血栓の病理所見が診断に有用であった感染性心内膜炎および非細菌性血栓性心内膜炎による心原性脳塞栓症の2例

結城 貴和1)*, 下里 倫1), 飯島 明1)

Corresponding author: JCHO 東京新宿メディカルセンター脳神経血管内治療科〔〒162-8543 東京都新宿区津久戸町5-1〕
1) JCHO 東京新宿メディカルセンター脳神経血管内治療科

症例1は55歳男性,菌血症加療中に左中大脳動脈閉塞から脳梗塞を来し,血栓回収療法で感染性心内膜炎の疣贅が回収された.症例2は59歳女性,肝内胆管癌化学療法中に末梢枝の脳梗塞を発症後,再度左中大脳動脈閉塞から脳梗塞を発症し,血栓回収療法で非細菌性血栓性心内膜炎(nonbacterial thrombotic endocarditis,以下NBTEと略記)の疣贅が回収された.担癌患者において,NBTEが従来想定されてきたより多くの脳梗塞発症に関わっている可能性がある一方で,感染性心内膜炎発症にも注意が必要である.両者の心内膜炎に起因する脳梗塞に対する血栓溶解療法や血栓回収療法の有効性や安全性については今後も検討が必要であるが,回収栓子が鑑別の手掛かりとなる可能性が考えられる.
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(臨床神経, 60:846−851, 2020)
key words:感染性心内膜炎,非細菌性血栓性心内膜炎,心原性脳塞栓症,血栓回収療法

(受付日:2020年3月2日)