臨床神経学

症例報告

急性呼吸障害を来した単純ヘルペス脳炎において脳幹病変が病理学的に確認できた89歳男性の1例

林 友豊1)*, 荒木 克哉1), 井上 貴美子2), 安藤 紘花3), 藤村 晴俊2), 巽 千賀夫1)

Corresponding author: 市立豊中病院神経内科〔〒560-8565 大阪府豊中市柴原町4丁目14番1号〕
1) 市立豊中病院神経内科
2) 国立病院機構大阪刀根山医療センター脳神経内科
3) 市立豊中病院病理診断科

症例は89歳男性.38℃台の発熱が持続し意識障害が出現したため入院となった.血液検査で低Na血症を認め,頭部MRIの拡散強調画像で両側帯状回皮質に高信号を認めたが,脳脊髄液中の細胞数上昇を認めなかった.血液検査で抗単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)IgM抗体陽性が判明したのちに,アシクロビルを投与したものの呼吸状態が急速に悪化し第8病日に死亡した.剖検では急性壊死性脳炎を認め,炎症は橋被蓋や延髄にも及んでいた.単純ヘルペス脳炎(herpes simplex encephalitis)における急性呼吸障害の原因として脳幹病変を病理学的に確認することができた貴重な症例であった.
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(臨床神経, 60:840−845, 2020)
key words:単純ヘルペス脳炎,脳幹脳炎,高齢者,呼吸不全

(受付日:2020年3月2日)