臨床神経学

症例報告

脳梗塞と脊髄出血を同時期に発症した原発性中枢神経系血管炎と考えられた1例

和田 隆史1), 北口 浩史1)*, 進藤 克郎1)

Corresponding author: 倉敷中央病院脳神経内科〔〒710-8602 岡山県倉敷市美和1-1-1〕
1)倉敷中央病院脳神経内科

症例は61歳女性.突然の激烈な腰背部痛と左下肢の脱力を自覚し,同日中に頭部全体の拍動性頭痛も出現した.初診時には左下肢の筋力低下に加えて,左下方の四分の一盲と左下肢の振動覚低下も認めた.血液検査で凝固系や自己抗体の異常はなく,髄液検査で血性髄液と炎症所見を認めた.頭部MRIで複数の脳血管狭窄を伴う脳梗塞と脳表のクモ膜下出血,脊髄MRI で頸髄,胸髄,一部腰髄に多発する脊髄出血を認めた.これらは同時期に発症しており,血管炎を推定しステロイド投与を行い脳血管狭窄は改善した.原発性中枢神経系血管炎と可逆性脳血管攣縮症候群は症状や検査所見,治療が異なるが,病初期は鑑別が困難な場合があり留意が必要である.
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(臨床神経, 59:268−273, 2019)
key words:原発性中枢神経系血管炎,脊髄出血,可逆性脳血管攣縮症候群

(受付日:2019年2月18日)