臨床神経学

症例報告

嚥下性失神が生じたパーキンソン病の1例

末次 南月1)4)*, 後藤 公文1), 川久保 洋晴2), 曲淵 裕樹2), 前田 泰宏3), 松永 和雄2)

Corresponding author: 伊万里有田共立病院神経内科〔〒849-4193 佐賀県西松浦郡有田町二ノ瀬甲860番地〕
1)伊万里有田共立病院神経内科
2)伊万里有田共立病院内科
3)長崎川棚医療センター神経内科
4)現:高木病院神経内科

パーキンソン病(Parkinson disease; PD)の73歳女性が誤嚥性肺炎のため入院し,食事中に嚥下を誘因として徐脈を伴う意識消失が生じた.上部消化管内視鏡検査では食道に器質的病変をみとめず,頸部食道におけるバルーン拡張にて意識消失に至る洞停止と徐脈が生じた.PDに伴う食道蠕動障害による頸部食道の拡張が迷走神経反射を惹起し嚥下性失神(swallow syncope; SS)が生じたと考えた.本例はhead-up tilt試験にて起立性低血圧をみとめ,心電図R-R間隔の変動とHolter心電図検査におけるRR50は正常であった.PDに由来する交感神経機能が低下し副交感神経機能は維持されている心血管系自律神経障害が,本例のSS発症に関与した可能性がある.
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(臨床神経, 59:149−152, 2019)
key words:嚥下性失神,パーキンソン病,head-up tilt試験,心電図R-R間隔

(受付日:2018年11月4日)