臨床神経学

総説

自閉スペクトラム症
―診断上の留意点と,発症メカニズムの最近の知見について―

加藤 秀一1)*, 尾崎 紀夫1)

Corresponding author: 名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野〔〒460-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65〕
1)名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野

自閉スペクトラム症は,社会性やコミュニケーションの障害,および行動・興味・活動の限局を特徴とし,米国精神医学会の精神障害診断・統計マニュアル第5版では,非常に多様な表現型を包含することとなった.何らかの身体症状や精神障害を併存することが多く,包括的評価が求められる.ゲノム解析が広く行われ,頻度は低いものの発症に強い影響を与えるゲノムバリアントの同定により,一部の患者に共通する発症メカニズムが明らかとなりつつある.その結果,クロマチン制御の異常によるエピジェネティックな変化が,発症に強く影響を及ぼしている可能性が示唆されている.病態の解明,治療法開発に向けてさらなる研究が求められている.
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(臨床神経, 59:13−20, 2019)
key words:自閉スペクトラム症,診断,ゲノムバリアント,ヒストン修飾,クロマチンリモデリング

(受付日:2018年10月13日)