臨床神経学

症例報告

出現と消退を繰り返す画像病変を呈し,2度の脳生検で診断し得た中枢神経系原発リンパ腫の36歳女性例

高曽根 健1)*, 小林 千夏1), 加藤 修明1), 金子 智喜2), 神宮 邦彦3), 池田 修一1)

Corresponding author: 信州大学医学部脳神経内科,リウマチ・膠原病内科〔〒390-8621 長野県松本市旭3-1-1〕
1)信州大学医学部脳神経内科,リウマチ・膠原病内科
2)信州大学医学部画像検査医学
3)信州大学医学部附属病院臨床検査部

症例は36歳女性である.急性発症のめまいのために前医を受診し,頭部MRIで造影効果のない両側大脳白質多発病変を指摘された.多発性硬化症として治療されたが新規病変の出現を認め,当院に入院をした.神経学的には企図振戦,右上下肢協調運動拙劣,失調性歩行を認めた.血液,髄液検査に異常なく,追跡の頭部画像検査で病変は急速な出現と消退を繰り返した.脳生検を行ったが非特異的所見であり診断に至らず,5ヶ月後の再生検で中枢神経系原発リンパ腫と診断され,化学療法にて寛解を得た.本疾患は非腫瘍性先行病変を含む多彩な脳MRI所見を呈する可能性があり,複数回の脳生検も積極的に検討することが重要と考えられた.
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(臨床神経, 58:440−444, 2018)
key words:中枢神経系原発リンパ腫,MRI 所見,再発寛解性病変,sentinel lesion,脳生検

(受付日:2018年1月26日)