臨床神経学

症例報告

血球貪食症候群,急性腎不全,消化管穿孔を合併したサイトメガロウイルス筋炎の60歳男性例

松尾 欣哉1)2), 西原 秀昭1), 古賀 道明1), 尾本 雅俊1), 小笠原 淳一1), 川井 元晴1), 神田 隆1)*

Corresponding author: 山口大学大学院医学系研究科神経内科学〔〒755-8505 山口県宇部市南小串1丁目1-1〕
1)山口大学大学院医学系研究科神経内科学
2)現:山口県立総合医療センター神経内科

60歳男性.急性腎不全と血球貪食症候群のため入院した.免疫学的治療により腎機能と血球貪食所見は改善したが,その後数日の経過で血清CK 値上昇と四肢筋力低下が出現した.体幹筋よりも下肢近位筋に筋力低下のアクセントがあり,免疫学的治療の中止後も筋力が自然経過で改善した点からウイルス性筋炎を疑った.経過中に盲腸穿孔をきたし,腸管病理でサイトメガロウイルス(cytomegalovirus; CMV)感染が証明され,血清IgG型抗CMV抗体価が著増していたことから,CMVの再活性化が一連の病態の契機になったと考えた.血球貪食症候群,急性腎不全,筋炎,腸炎は各々CMV感染の合併症であるが,本症例は一連の病態を短期間で呈した初の報告である.
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(臨床神経, 58:423−429, 2018)
key words:ウイルス性筋炎,サイトメガロウイルス,血球貪食症候群,急性腎不全,消化管穿孔

(受付日:2017年11月7日)