臨床神経学

症例報告

難聴を呈し,経過中に中枢性低換気を認めたE200K変異による家族性Creutzfeldt-Jakob病の43歳女性例

宮川 晋治1)*, 向井 泰司1), 谷口 洋1)

Corresponding author: 東京慈恵会医科大学附属柏病院神経内科〔〒277-8567 千葉県柏市柏下163-1〕
1)東京慈恵会医科大学附属柏病院神経内科

症例は43歳女性.1ヶ月の経過で異常言動,難聴,失調性歩行,過呼吸が出現した.経過中に中枢性低換気を呈したが自然軽快と再出現を繰り返した.髄液14-3-3蛋白は陰性で家族歴もないが,髄液でRT-QUIC法により異常プリオン蛋白が検出され遺伝子検査でE200K変異による家族性クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease; CJD)と診断された.経過を通してDWIでの皮質の信号変化や,脳波で周期性同期放電を認めなかった.中枢性低換気は脳幹の呼吸中枢の障害によるものと推測され,難聴も聴性脳幹反応(auditory brainstem response; ABR)所見から脳幹レベルでの障害と考えられた.CJDでは皮質症状に加えて脳幹症状が早期に出現する場合があり,DWIで異常を呈さない例もあるため鑑別に留意する必要がある.
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(臨床神経, 58:673−676, 2018)
key words:Creutzfeldt-Jakob病,E200K 変異,難聴,中枢性低換気,ABR

(受付日:2018年7月9日)