臨床神経学

症例報告

ステロイド治療に抵抗して急速に進行し,脳生検にて診断しえた中枢神経系血管炎の28歳男性の1例

高橋 啓悟1) , 佐藤 秀樹1)*, 服部 英典1), 尾 昌樹2), 橋 愼一3), 鈴木 則宏3)

Corresponding author: さいたま市立病院神経内科〔〒336-8522 埼玉県さいたま市緑区三室2460〕
1)さいたま市立病院神経内科
2)埼玉医科大学国際医療センター神経内科・脳卒中内科
3)慶應義塾大学医学部神経内科

症例は28歳男性.痙攣発作を契機に頭部MRIで脳内多発性病変を指摘された.ステロイドパルス療法4回,血漿交換療法5回を実施したが症状や画像所見は急速に増悪した.この間,開頭脳生検を行い病理所見から細小動脈を主体とする血管炎を認めた.炎症反応や各種自己抗体を欠き,中枢神経系血管炎(central nervous systemvasculitis; CNSV)と診断し,シクロフォスファミド投与にて改善を得た.CNSVの確定診断に病理所見は有用で積極的な脳生検が重要と思われた.また本例では脳組織PCR検査でヒトヘルペスウイルス7(human herpesvirus 7;HHV-7)が陽性であった.本疾患発症との関連は不明だが,今後の同様の症例の蓄積・検討が望まれる.
Full Text of this Article in Japanese PDF (1093K)

(臨床神経, 57:509−514, 2017)
key words:中枢神経系血管炎(CNSV),ステロイド治療抵抗性,脳生検,シクロフォスファミド,HHV-7

(受付日:2017年3月21日)