臨床神経学

症例報告

シャルコー・マリー・トゥース病に類似した三頭酵素欠損症の成人例

山本 雄貴1)*, 松井 尚子1), 平松 有2), 宮崎 由道1)3), 野寺 裕之1), 和泉 唯信1), 嶋 博2), 梶 龍兒1)

Corresponding author: 徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床神経科学〔〒770-8503 徳島県徳島市蔵本町3丁目18-15〕
1)徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床神経科学
2)鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経内科老年病学講座
3)兵庫県立淡路医療センター神経内科

症例は60歳男性.小児期より運動後の筋疲労感や褐色尿を自覚したが症状は軽微であった.45歳頃より両下肢遠位部優位の筋萎縮,感覚障害が進行した.神経伝導検査で軸索型末梢神経障害を呈し,シャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease; CMT)が疑われた.55歳より横紋筋融解症を繰り返すようになり,血清アシルカルニチン分析と遺伝子検査から三頭酵素欠損症と診断した.三頭酵素欠損症は先天性脂質代謝異常症の稀な一型であるが,末梢神経障害を合併してCMTに類似した臨床所見を呈しうる.筋症状を伴う進行性の末梢神経障害をみた場合,積極的に本疾患を疑って精査すべきである.
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(臨床神経, 57:82−87, 2017)
key words:三頭酵素欠損症,HADHB遺伝子,長鎖脂肪酸,末梢神経障害,横紋筋融解症

(受付日:2016年10月25日)