臨床神経学

症例報告

可逆性のMRI病変が認められた高齢初発複雑部分発作の1例

白岩 伸子1)2)*, 保坂 孝史2)4), 榎本 強志3), 星野 幸子2), 玉岡 晃4), 大越 教夫1)

Corresponding author: 筑波技術大学保健科学部保健学科〔〒305-8521 茨城県つくば市春日4-12-7〕
1)筑波技術大学保健科学部保健学科
2)筑波記念病院神経内科
3)筑波記念病院循環器内科
4)筑波大学医学医療系神経内科

症例は79歳女性.入院時より遷延する意識障害・右片麻痺があり,頭部MRI上,急性期脳梗塞様の広範囲な皮質病変を認めた為,当初は急性期脳梗塞として治療した.第5病日に右上下肢の痙攣発作および新たなMRI病変を認め,脳波上てんかん波を認めたことから,抗てんかん薬を開始した.抗てんかん薬開始後,上記の症状の改善とともにMRI所見の改善が認められた.また,MRI上,上記の皮質病変とは異なる左海馬等に陳旧性の病変を認め,そこを焦点とした複雑部分発作と考えられた.高齢者の複雑部分発作では,てんかん発作後もうろう状態が長い傾向にある.本症例でも意識障害や片麻痺が消失するまでに2週間を要した.
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(臨床神経, 56:472−476, 2016)
key words:高齢初発てんかん,可逆性MRI病変,発作時麻痺

(受付日:2015年10月3日)