臨床神経学

症例報告

排便後の意識消失で発症した心臓粘液腫による脳塞栓症の1例

池田 知雅1)*, 大村 眞弘2), 佐藤 千香子1), 阿南 知世1), 山田 健太郎1), 紙本 薫1)

Corresponding author: 名古屋市立東部医療センター神経内科〔〒464-8547 愛知県名古屋市千種区若水一丁目2番23号〕
1)名古屋市立東部医療センター神経内科
2)名古屋市立大学大学院医学研究科生体防御・総合医学専攻神経内科学

症例は74歳男性.排便後に意識を消失し,意識が回復した後もめまいで歩行困難となり当院へ救急搬送された.左上下肢に失調を認め,頭部MRIにて両側小脳を中心に多発する急性期脳梗塞を認めた.発症後3時間20分より経静脈的血栓溶解療法を開始,症状は改善した.経胸壁心エコーにて左房内に可動性の腫瘤を認め粘液腫が疑われた.発症第14日目に摘出術を施行し病理学的に粘液腫と診断された.本症例の特徴的な発症様式から,排便による胸腔内圧の上昇をきっかけに粘液腫の一部もしくは表面の血栓が遊離し得ることが考えられた.バルサルバ手技様の動作や意識消失に引き続いて発症する塞栓症では心臓粘液腫の可能性も考慮すべきである.
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(臨床神経, 56:328−333, 2016)
key words:心臓粘液腫,脳梗塞,経静脈的血栓溶解療法,バルサルバ手技

(受付日:2015年12月21日)