臨床神経学

短報

反復性の一過性視覚障害で発症した脳硬膜動静脈瘻を伴う脳静脈洞血栓症の1例

佐藤 健朗1), 松野 博優1), 大本 周作1)*, 作田 健一1), 寺澤 由佳1), 井口 保之1)

Corresponding author: 東京慈恵会医科大学神経内科〔〒105-0003 東京都港区西新橋3-25-8〕
1)東京慈恵会医科大学神経内科

症例は75歳男性である.頸部回旋や怒責で視界が灰色にかすみ,その後,30秒で回復する一過性視覚障害を繰り返した.その数週間後に拍動性の耳鳴,項部から後頭部に及ぶ鈍痛が出現した.両側うっ血乳頭,著明な頭蓋内圧亢進を認め,右S状静脈洞血栓症,および右上行咽頭動脈と右後頭動脈から右横静脈洞に流入する脳硬膜動静脈瘻と診断した.抗凝固療法およびコイル塞栓術により症状は消失した.一過性視覚障害の機序として軽度の頭蓋内圧亢進症の存在下に頸部回旋や怒責に伴う頭蓋内圧上昇により視神経乳頭の栄養血管が一過性潅流障害を生じたことが考えられた.本症候は頭蓋内圧亢進症の初期症状として重要と考え報告する.
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(臨床神経, 56:281−284, 2016)
key words:一過性視覚障害,うっ血乳頭,頭蓋内圧亢進症,脳静脈洞血栓症,脳硬膜動静脈瘻

(受付日:2015年12月16日)