臨床神経学

短報

急性前骨髄球性白血病の完全寛解後に中枢神経播種をきたした1例

蓮池 裕平1), 山口 浩司1), 三井 秀紀2), 西川 嘉郎1), 須貝 文宣1)*

Corresponding author: 国家公務員共済組合連合会大手前病院神経内科〔〒540-0008 大阪府大阪市中央区大手前1-5-34〕
1)国家公務員共済組合連合会大手前病院神経内科
2)国家公務員共済組合連合会大手前病院血液内科

症例は70歳女性である.急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia;APL)の完全寛解後に,左三角筋,右手内筋,両下肢の筋力低下と,右大腿外側および両下肢遠位の異常感覚が出現した.末梢血では異型細胞は検出されなかったが,髄液中に前骨髄球を,造影MRIでは脊髄多発性病変をみとめた.末梢神経伝導検査では下肢優位の伝導異常をみとめ,髄腔内化学療法・全脊髄照射後に神経症状が完全に消失したことからAPLの髄膜播種および神経根近傍への浸潤を疑った.APLの中枢神経播種は稀であるが,何らかの神経症状が出現した場合は早急な精査加療が必要である.
Full Text of this Article in Japanese PDF (413K)

(臨床神経, 56:273−276, 2016)
key words:急性前骨髄球性白血病,中枢神経播種,全トランス型レチノイン酸

(受付日:2015年10月19日)