臨床神経学

総説

筋萎縮性側索硬化症
〜人工呼吸器装着の背景因子と予後分析〜

木村 文治1)*

Corresponding author: 大阪医科大学内科学(1)神経内科〔〒569-8686 大阪府高槻市大学町2番7号〕
1)大阪医科大学内科学(1)神経内科

筋萎縮性側索硬化症における人工呼吸器装着は最も重要な治療手段選択の一つである.事前意思確認を行なった1990〜2013年までの自験例190例の調査結果から,発症から診断までの期間,侵襲的・非侵襲的人工呼吸器装着率,年齢による装着率の変化と推移および予後解析を報告した.その中で,1990〜2010年までの160例について,侵襲的人工呼吸器装着による延命効果に影響する因子(年齢,配偶者など)を分析すると共に,侵襲的人工呼吸器装着を決定する因子分析を行い,装着年齢,配偶者の存在,残存運動機能の有無,呼吸器装着までの期間と診断時進行度などが関与することを示した.2010年以後の侵襲的・非侵襲的人工呼吸器装着率の経時的分析結果から,非侵襲的人工呼吸器装着率が年々増加する一方,侵襲的人工呼吸器装着率は減少傾向を示した.世界における人工呼吸器装着率の現況を考察した.
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(臨床神経, 56:241−247, 2016)
key words:予後,陽圧式人工呼吸器,ALS評価スケール,残存運動機能,レスパイト

(受付日:2015年10月22日)