臨床神経学

短報

ネコ咬傷後に慢性硬膜下血腫から硬膜下膿瘍に進展したと考えられた1例

今野 卓哉1), 山田 慧1), 笠原 壮1), 梅田 能生1), 小宅 睦郎1), 藤田 信也1)*

Corresponding author: 長岡赤十字病院神経内科〔〒940-2085 長岡市千秋2丁目297-1〕
1)長岡赤十字病院神経内科

症例は69歳男性である.ネコ咬傷により発症した蜂窩織炎と敗血症の治療中に,頭痛,軽度の喚語困難と右不全片麻痺が出現した.頭部MRI拡散強調画像(diffusion-weighted image; DWI)で左大脳半球の硬膜下に三日月形の低信号病変を認め,慢性硬膜下血腫が疑われたが,7日後に神経症状が増悪し,硬膜下病変はDWI高信号に変化した.ネコの口腔内常在菌であるPasteurella multocidaによる硬膜下膿瘍の報告があり,本例は,既存の硬膜下血腫に血行性に細菌が感染して膿瘍化した感染性硬膜下血腫と考えられた.本例は,血腫から膿瘍への変化を画像的に追跡し得た貴重な症例である.
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(臨床神経, 55:657−660, 2015)
key words:感染性硬膜下血腫,硬膜下膿瘍,慢性硬膜下血腫,ネコ咬傷,Pasteurella multocida

(受付日:2015年2月19日)