臨床神経学

症例報告

先天性顔面神経麻痺に核上性眼球運動障害を呈し,Möbius症候群と診断した1例

古田 充1), 三原 雅史1), 木村 康義1), 奥野 龍禎1), 高橋 正紀1), 望月 秀樹1)*

Corresponding author: 大阪大学医学部附属病院神経内科・脳卒中科〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2〕
1)大阪大学医学部附属病院神経内科・脳卒中科

症例は18歳男性である.生下時より咀嚼筋,顔面筋の筋力低下があり,当科を受診した.両側咬筋の萎縮と顔面筋力の重度低下をみとめ,閉口困難・兎眼を呈していた.左眼に内外転障害と随意運動時の上転障害をみとめたがBell現象は残存していた.顔面神経伝導検査で遠位潜時は保たれていたが瞬目反射は導出不能で,針筋電図では舌に神経原性変化をみとめた.上肢筋生検や皮膚生検でも異常所見はなく,先天性顔面神経麻痺に核上性眼球運動障害を呈したMöbius症候群と診断した.Möbius症候群は先天性の顔面麻痺と外転麻痺を呈する症候群だが,その病態と症状は多様である.同症候群を考える上で貴重な症例であり,ここに報告する.
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(臨床神経, 55:233−237, 2015)
key words:Möbius症候群,先天性顔面神経麻痺,核上性眼球運動障害

(受付日:2014年2月26日)