臨床神経学

症例報告

右後大脳動脈領域梗塞により同時失認と街並失認を来した1例

小林 康孝1)*, 村松 倫子1), 佐藤 万美子1), 林 広美2)*, 三浦 豊章1)

Corresponding author: 福井総合病院リハビリテーション科〔〒910-8561 福井市江上町58-16-1〕
1)福井総合病院リハビリテーション科
2)福井総合クリニックリハビリテーション科

症例は68歳男性である.地誌的障害に対するリハビリ目的で当院に入院した.頭部MRIでは右後頭葉内側の脳梗塞巣を認めた.神経心理学的検査では,各種検査の視覚情報を用いる課題で点数が低かったが,全般的な認知機能は保たれていた.標準高次視知覚検査の「状況図」説明において,部分の説明は出来るが絵全体の説明ができないという同時失認の所見がみられた.また,旧知・新規どちらの場所においても,位置関係は説明できるが同定ができないという街並失認を認めた.右後頭葉病変による同時失認の報告は少なく,貴重な症例と思われたため報告する.
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(臨床神経, 55:722−727, 2015)
key words:同時失認,街並失認,標準高次視知覚検査,状況図,右後大脳動脈領域梗塞

(受付日:2015年3月11日)