臨床神経学

短報

セボフルランをもちいた全身麻酔下手術後に高次脳機能症状の改善速度の上昇をみとめたヘルペス脳炎の53歳男性例

冨樫 尚彦1), 海田 賢一1)*, 本郷 悠1), 小川 剛1)4), 石川 幸伸2)5)*, 武田 克彦3)*, 鎌倉 惠子1)6)

Corresponding author: 防衛医科大学校病院神経内科〔〒359-8513 埼玉県所沢市並木3-2〕
1)防衛医科大学校神経内科
2)国際医療福祉大学三田病院リハビリテーション科
3)国際医療福祉大学三田病院神経内科
4)現:帝京大学神経内科
5)現:国際医療福祉大学福岡保健医療学部言語聴覚学科
6)現:東京工科大学医療保健学部理学療法学科

症例は53歳の男性である.発熱,意識障害で発症したヘルペス脳炎である.42日間のアシクロビル投与後に意識障害は改善したが20日後に再増悪し,ビダラビン投与とステロイドパルス療法で改善した.MRI上病巣は左側頭葉と両側島回,両側前頭葉であった.第98病日に超皮質性感覚失語が確認されその後変化はなかったが,第156病日のセボフルランをもちいた全身麻酔下大腿骨頭置換術後に失語はいちじるしく改善した.自然経過の可能性はあるが,セボフルランが炎症性脳障害の回復をうながし結果として高次脳機能障害の改善をうながした可能性もある.
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(臨床神経, 54:743−746, 2014)
key words:ヘルペス脳炎,超皮質性感覚性失語,高次脳機能障害,吸入麻酔薬,セボフルラン

(受付日:2014年2月24日)