臨床神経学

症例報告

左右差の強い下肢ジストニアをみとめたspinocerebellar ataxia type 31(SCA31)の1例

齋藤 理恵1)*, 菊野 庄太1), 前田 明子1), 上坂 義和1), 井田 雅祥2)

Corresponding author: 虎の門病院神経内科〔〒105-8470 東京都港区虎ノ門2-2-2〕
1)虎の門病院神経内科
2)虎の門病院リハビリテーション科

症例は77歳男性である.56歳頃から左下肢の引きずりと,構音障害が出現した.症状は緩徐に進行し発症7年で杖歩行,10年で車いすが必要になった.62歳時当院初診,脊髄小脳変性症の診断にて,タルチレリンを開始した.今回,脳梗塞のため入院した.入院時神経学的所見として右不全片麻痺と小脳失調症状に加え左下肢のジストニアをみとめた.遺伝子検査をおこなったところspinocerebellar ataxia type 31(SCA31)に特異性の高い,PLEKHG4遺伝子の1塩基置換(-16C>T)と,SCA31 locusにおいて挿入変異をみとめSCA31と診断した.ジストニアを呈するSCA31の既報告はなく,貴重な症例と考え報告する.
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(臨床神経, 54:643−647, 2014)
key words:SCA31,ジストニア,不随意運動,小脳

(受付日:2013年5月16日)