臨床神経学

症例報告

くりかえす脳梗塞が診断の契機となった中枢神経限局型ANCA関連血管炎の1例

脇坂 佳世1), 萩原のり子1)*, 金澤 有華1), 荒川 修治1), 吾郷 哲朗2), 北園 孝成2)

Corresponding author: 九州労災病院脳血管内科〔〒800-00296 福岡県北九州市小倉南区曽根北町1-1〕
1)九州労災病院脳血管内科
2)九州大学大学院医学研究院・病態機能内科学

症例は73歳男性である.自発性の低下を主訴に来院し,MRI拡散強調画像で右尾状核と左被殻に高信号域をみとめた.脳梗塞の既往に対して抗血小板薬を服用しており,これに抗凝固薬を追加したが,第10病日に右片麻痺が出現し,MRIで多発性の新規病変をみとめた.他臓器症状はともなわなかったが,入院時より持続する発熱と炎症反応から血管炎の関与をうたがい,MPO-ANCAの上昇に基づきANCA関連血管炎と診断した.腎臓や肺の病変を合併せず,脳病変を契機に診断にいたったANCA関連血管炎の報告はまれであり,不明熱をともなう脳梗塞では血管炎による機序も念頭において検索を進めることが重要と考えられた.
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(臨床神経, 54:429−433, 2014)
key words:ANCA関連血管炎,脳梗塞,ステロイド,免疫抑制剤,neutrophil extracellular traps(NETs)

(受付日:2013年8月23日)