臨床神経学

短報

発症時のカルボキシヘモグロビンが正常であったが頭部MR spectroscopy所見が診断の契機となった間歇型一酸化炭素中毒の1例

神澤 朋子1), 井川 正道1)*, 濱野 忠則1), 永田 美和子2), 木村 浩彦3), 米田 誠1)

Corresponding author: 福井大学医学部附属病院神経内科〔〒910-1193 福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3〕
1)福井大学医学部附属病院神経内科
2)中村病院神経内科
3)福井大学医学部附属病院放射線科

症例は67歳男性である.独居であった.冬に急性に発症した意識障害にて入院した.意識障害の進行とともに,頭部MRIで両側大脳白質にびまん性に拡大するT2高信号病変がみとめられた.来院時の動脈血カルボキシヘモグロビン(carboxyhemoglobin; COHb)は正常であった.白質病変における1H-MR spectroscopy(MRS)にて,脱髄,嫌気性代謝亢進,神経細胞減少といった,一酸化炭素(CO)中毒による遅発性脳症に特徴的な所見がみとめられた.家族への詳細な問診によって発症2週間前の練炭使用歴がえられたため,間歇型CO中毒の診断にいたった.発症時のCOHbは正常であったが,特徴的なMRS所見が間歇型CO中毒の診断の契機となった.
Full Text of this Article in Japanese PDF (2996K)

(臨床神経, 54:234−237, 2014)
key words:間歇型一酸化炭素中毒,白質脳症,MR spectroscopy

(受付日:2013年5月13日)