臨床神経学

症例報告

硬膜脳生検で診断した抗酸菌性限局性髄膜炎の1例

坊野 恵子1), 仙石 錬平1)3)*, 松野 博優1), 森田 昌代1), 松島 理士2), 井口 保之1)

Corresponding author: 東京慈恵会医科大学神経内科〔〒105-0003 東京都港区西新橋3-25-8〕
1)東京慈恵会医科大学神経内科
2)東京慈恵会医科大学放射線科
3)現 東京都健康長寿医療センター神経内科

症例は76歳女性である.約2ヵ月の経過で右下肢の筋力低下が進行し,けいれん発作を呈した.入院時の頭部MRIで左頭頂部の髄膜に造影効果をみとめ,脳脊髄液検査は正常であった.入院後第15病日に硬膜脳生検を実施し,髄膜直下の脳組織に壊死をともなう炎症細胞浸潤とZiehl-Neelsen染色陽性の抗酸菌をみとめた.髄液,血液,硬膜いずれの培養も陰性であった.治療として抗結核薬,抗非結核性抗酸菌薬を選択し,副腎皮質ステロイドを併用した.抗酸菌感染症は起因菌の検出同定が困難な症例も多く,頭部MRIで髄膜が造影される症例では,侵襲度を勘案しながら硬膜および髄膜直下の脳組織生検を考慮すべきである.
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(臨床神経, 54:140−145, 2014)
key words:抗酸菌,髄膜炎,チール-ネルゼン染色,肥厚性硬膜炎,結核

(受付日:2013年3月16日)