臨床神経学

短報

造影MRIで左動眼神経と三叉神経に造影効果をみとめた非典型Tolosa-Hunt症候群の1例

山本 大輔1)*, 津田 笑子1), 齊藤 正樹1), 今井 富裕2), 下濱 俊1)

Corresponding author: 札幌医科大学神経内科〔〒060-8543 札幌市中央区南1条西16丁目〕
1)札幌医科大学神経内科
2)札幌医科大学保健医療学部作業療法学科

症例は30歳の女性である.激しい左眼窩痛と複視,左眼瞼下垂で当科に入院した.左動眼神経および三叉神経第1,2枝の麻痺をみとめ,ステロイドの経口投与後72時間以内に疼痛が消失したため,暫定的にTolosa-Hunt症候群(Tolosa-Hunt syndrome; THS)と診断した.造影MRIで海面静脈洞近傍に肉芽腫はみとめなかったが,海綿静脈洞内から眼窩内の左動眼神経および三叉神経に造影効果をみとめた.脳神経麻痺は治療後に軽快したものの,第200病日の現在も残存しており,MRIでの脳神経の造影効果も消失していなかった.本例のようにMRIで脳神経に造影効果がみられる非典型THSでは,これらの造影MRI所見が病理学的変化の指標になると考えられた.
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(臨床神経, 54:903−906, 2014)
key words:Tolosa-Hunt症候群,MRI,動眼神経,三叉神経,造影効果

(受付日:2013年12月26日)