臨床神経学

症例報告

帯状疱疹ウイルス再活性化による脳梗塞および脳動脈瘤を発症した後天性免疫不全症候群(AIDS)の1例

安田 千春1)*, 岡田 和将1), 大成 宣弘2), 赤松 直樹1), 辻 貞俊1)

Corresponding author: 福岡大学医学部・医学研究科脳神経外科〔〒814-0180 福岡県福岡市城南区七隅7丁目〕
1)産業医科大学神経内科
2)産業医科大学放射線科

症例は35歳男性である.構音障害,中枢性左顔面神経麻痺,左片麻痺が急性に進行した.28歳時に後天性免疫不全症候群(AIDS)を発病し,35歳時に抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)療法が導入された.頭部MRIで右放線冠から内包後脚にかけて急性期脳梗塞と,脳血管造影で右Heubner動脈末梢に嚢状動脈瘤をみとめた.髄液の帯状疱疹ウイルス(VZV)IgG抗体価とVZV抗体価指数の高値からVZV再活性化の関与を考え,脳梗塞急性期治療に加えアシクロビルを開始し,神経症状は改善した.AIDSに合併した脳梗塞の報告は本邦では少なく,その発症機序としてVZV再活性化が重要であり報告する.
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(臨床神経, 53:701−705, 2013)
key words:後天性免疫不全症候群,脳梗塞,脳動脈瘤,帯状疱疹ウイルス

(受付日:2012年10月31日)