臨床神経学

症例報告

SCA8遺伝子のCTA/CTGリピート数増大をみとめた若年性パーキンソニズムの1例

宮脇 統子1)*, 関口 兼司1), 安井 直子1), 上田 健博1), 苅田 典生1), 戸田 達史1)

Corresponding author: 神戸大学大学院医学研究科神経内科/分子脳科学〔〒650-0017 神戸市中央区楠町7丁目5番1号〕
1)神戸大学大学院医学研究科神経内科学/分子脳科学

症例は31歳男性である.2年前より右下肢のふるえが出現,1年前よりふるえが両下肢に拡大した.安静時主体の振戦がめだち,右優位のパーキンソニズムを呈していた.遺伝子検査で,SCA8遺伝子のCTA/CTGリピート伸長をみとめた.本例はSCA8の典型的な症状である失調はみとめていなかった.パーキンソンニズムに対しL-DOPAの投与をおこなったところ,症状の明らかな改善をみとめた.SCA8リピートの異常伸長は健常者およびその他の疾患でも報告されているが,本例は従来の報告例よりもリピート数が多く,病的意義があると考えられた.本例でのひき続きの臨床症状の経過観察と,さらなる症例の集積が必要である.
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(臨床神経, 53:278−282, 2013)
key words:遺伝子検査,パーキンソン病,脊髄小脳変性症,トリプレット・リピート病

(受付日:2012年3月28日)