臨床神経学

楢林賞

重度嗅覚障害はパーキンソン病認知症の前駆徴候である

武田 篤1)*

Corresponding author: 東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経内科学分野〔〒980-8574 仙台市青葉区星陵町1−1〕
1)東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経内科学分野

われわれは最近,嗅覚障害がパーキンソン病(PD)認知症の併発を予測する徴候であることを報告した.重度嗅覚障害を示すPD群は認知機能低下と関連して報告されて来た脳代謝低下分布を示した.またvolumetric MRIによる検討から,嗅覚障害は扁桃体や他の辺縁系をふくむ局所脳萎縮と関連していることが明らかとなった.ドパミン補充療法の発達,そして高齢発症例の増加により,現在PDの予後をもっとも大きく悪化させるのは随伴する認知症の存在であることが知られている.しかしながらその発症を早期に的確に予測できる方法論は未だ確立していない.嗅覚テストは今後,進行期PDの治療において重要な役割を果たして行くと考えられる.
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(臨床神経, 53:91−97, 2013)
key words:嗅覚低下,パーキンソン病認知症,OSIT-J,PET,MRI

(受付日:2012年10月31日)