臨床神経学

<シンポジウム(4)―12―2>孤発性疾患における遺伝子異常の探索法

染色体構造変化:多系統萎縮症でのアプローチ

矢部 一郎1), 佐々木 秀直1)

1)北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座神経内科学〔〒060-8638 北海道札幌市北区北十五条西7丁目〕

ヒトゲノム不安定領域は全ゲノムの10%を占め,Kb〜Mb単位の配列からなる多様な構造変化をきたす.この構造多型はコピー数多型(CNV)と称され,その変異率は高く孤発性疾患の素因として注目されている.CNVによって,そのCNV領域内の遺伝子の翻訳産物量が変化するのみならず,CNV以外の領域にある遺伝子の転写産物量にも変化をもたらす.その機序としてCNV内のmiRNAなどを介した転写やsplicing機構が明らかになっている.最近,われわれはMSA発症者と健常者の組み合わせである一卵性双生児例を経験した.この例をふくめたMSAにおけるCNV解析の実例について本論文で紹介した.
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(臨床神経, 53:1333−1335, 2013)
key words:染色体構造変化,copy number variation,多系統萎縮症

(受付日:2013年6月1日)