臨床神経学

<シンポジウム(2)―4―1>運動ニューロン疾患の遺伝学:Update

わが国のALSにおけるC9ORF72

富山 弘幸1)

1)順天堂大学医学部脳神経内科/神経変性疾患病態治療探索講座〔〒113-8421 東京都文京区本郷2丁目1-1〕

最近,C9orf72のイントロン1内の6塩基くりかえし配列の異常伸長が,白人の孤発性および家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)そして前頭側頭型認知症(FTD)のもっとも頻度の高い原因であると報告された.本邦では,C9orf72変異患者は家族性ALSの2.8%(3/109),孤発性ALSの0.4%(4/891)を占め,紀伊半島南部のALS多発地域では20%(3/15)で高率であり,すべて共通リスクハプロタイプをもっていた.日本人におけるC9orf72変異の頻度は白人よりも低かったが,C9orf72変異は,家族性および孤発性ALSにおいて,認知症とくにFTDについても家族歴を詳細に確認の上,解析されるべきと考えられた.C9orf72の更なる解析から症例の蓄積とともに機能解析が進み,家族性および孤発性ALS,ALS/FTDの病態解明から治療に繋がっていくことが期待される.
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(臨床神経, 53:1074−1076, 2013)
key words:C9orf72,筋萎縮性側索硬化症(ALS),前頭側頭型認知症(FTD),原発性進行性失語(PPA),遺伝学

(受付日:2013年5月30日)