臨床神経学

短報

脳腫瘍生検で著明な炎症性肉芽腫所見を呈した脳胚細胞腫の1例

陸 雄一1), 伊藤 瑞規1), 熱田 直樹1), 渡辺 宏久1), 百田 洋之2), 祖父江 元1)*

Corresponding author: 名古屋大学医学部神経内科〔〒466-8550 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65〕
1)名古屋大学神経内科
2)名古屋大学脳神経外科

症例は33歳男性である.緩徐に進行する複視,傾眠などで発症した.頭部MRIで,松果体近傍にガドリニウムで著明に造影される腫瘤性病変をみとめ,生検をおこなったところ,類上皮性肉芽腫の出現をともなう著明な炎症所見をみとめた.炎症性肉芽腫疾患をうたがいステロイドを投与したが,無効であったため,生検標本を免疫組織化学的に再検討したところ,c-kit,PLAP(placental alkaline phosphatase)に陽性の腫瘍細胞が少数確認され,胚細胞腫であったことが判明した.胚細胞腫はまれに炎症性肉芽腫病変を形成することがあり,生検標本における病理診断に注意が必要と考えられた.
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(臨床神経, 53:835−838, 2013)
key words:脳胚細胞腫,脳生検,類上皮肉芽腫

(受付日:2013年2月5日)