臨床神経学

短報

頸椎の歯突起後方偽腫瘍に対して椎弓後方除圧術が奏功した1例

立花 久嗣1)3)*, 影山 恭史1), 野口 隆2), 米田 行宏1), 市川 桂二1)

Corresponding author: 神戸大学医学部付属病院神経内科〔〒650-0017 兵庫県神戸市中央区楠町7丁目5-2〕
1)兵庫県立尼崎病院神経・脳卒中センター神経内科
2)兵庫県立尼崎病院整形外科
3)神戸大学医学部付属病院神経内科

約20年の競技用自転車の愛好歴のある63歳男性が,亜急性に進行する頸髄症による後頸部痛,両上肢の運動障害,痙性歩行を生じた.MRIでは,頸椎最上部の環軸椎後方部に腫瘤をみとめ,頸髄上部を圧迫していた.骨腫瘍,骨髄炎,リウマチ疾患を示唆する所見はなく,歯突起後方の偽腫瘍と診断した.腫瘤摘出をともなわない椎弓切除術のみを施行した.その後,神経症状は軽快し,1年後のMRIでは腫瘤は軽度縮小していた.本疾患は,環軸椎靭帯の慢性的な機械的刺激による靭帯肥厚が発生要因と推定されており,除圧術のみにより頸髄の圧迫が軽減され症状の改善が期待できる.
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(臨床神経, 53:33−36, 2013)
key words:脊髄,頸髄症,偽腫瘍,歯突起

(受付日:2012年2月27日)