臨床神経学

症例報告

両側性味覚障害を呈した右視床梗塞の1例

小河 秀郎1)*, 山川 勇2), 中島 敦史1), 山田 衆1)

Corresponding author: 公立甲賀病院内科〔〒528-0014 滋賀県甲賀市水口町鹿深3-39〕
1)公立甲賀病院内科
2)滋賀医科大学内科学講座

症例は58歳男性である.2006年3月某日13時頃,左半身脱力感を自覚.症状増悪のため同日17時に脳梗塞の診断にて当院入院.入院時,顔面をふくむ左半身不全麻痺をみとめたが感覚障害はみとめず.頭部MRIで右視床内側腹側に拡散強調画像高信号域をみとめた.点滴加療にて麻痺は入院3日目にほぼ消失.経口摂取を開始したところ,まったく味がわからないとの訴えあり,入院5日目に味覚検査を施行.両側で高度味覚障害をみとめたが,徐々に改善し入院15日目には症状消失した.右視床梗塞にともなう両側性味覚障害の報告は,われわれのしらべたところ2例目であり,味覚中枢伝導路を考える上で貴重な症例と考えられた.
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(臨床神経, 53:24−28, 2013)
key words:両側性味覚障害,右視床,脳梗塞

(受付日:2012年2月9日)