臨床神経学

日本神経学会賞受賞

ポリグルタミン凝集タンパク質の細胞内蓄積の意義とその新規分解機構の解明

岩田 淳1)*

Corresponding author: 東京大学医学部附属病院分子脳病態科学特任准教授・神経内科学〔〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1〕
1)東京大学医学部附属病院分子脳病態科学・神経内科学

神経変性疾患では異常凝集タンパク質の蓄積がその発症原因と密接にかかわっている.凝集タンパク質は封入体を形成するが,封入体自体には細胞毒性がないとする知見が多くえられている.事実,実験系ではアグリソームといわれる凝集蛋白による封入体が微小管をもちいたモータータンパク質による輸送システムによって形成され,細胞がその処理のために積極的に凝集蛋白を収集していることが想像された.筆者はこれがオートファジー・ライソゾーム系による凝集体分解の促進と密接にかかわっていることを発見した.本来非特異的な細胞質分解系であるオートファジーが凝集タンパク質に対しては「特異的」な認識システムを有して分解をおこなっている.
Full Text of this Article in Japanese PDF (3079K)

(臨床神経, 53:1−8, 2013)
key words:ポリグルタミン,オートファジー,アグリソーム,ユビキチン・プロテアソーム,HDAC6

(受付日:2012年10月9日)