臨床神経学

症例報告

遅発性低酸素白質脳症の2症例

奥田 志保1)*, 上野 正夫1), 早川 みち子2), 荒木 学3), 苅田 典生4), 高野 真1)

Corresponding author: 兵庫県立リハビリテーション中央病院神経内科〔〒651―2181 神戸市西区曙町1070〕
1)兵庫県立リハビリテーション中央病院神経内科
2)同 内科
3)国立精神・神経医療研究センター病院
4)神戸大学医学部附属病院神経内科

遅発性低酸素脳症(DPL)は,低酸素血症による意識障害から,一旦回復した数日から数週間後に,神経症状の増悪と頭部画像所見の悪化がみとめられるまれな病態である.われわれはベンゾジアゼピン系薬の過量内服によりDPLをきたした2症例を経験した.いずれもアリルスルファターゼA活性は正常であった.ベンゾジアゼピン系薬の中毒症は,救急診療の場においてしばしば遭遇することから,DPLの特徴である2相性の臨床経過や頭部MRIでみとめられる白質病変を理解し,DPL発症の可能性を常に念頭におくことが必要であると思われた.
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(臨床神経, 52:672−676, 2012)
key words:遅発性低酸素白質脳症,ベンゾジアゼピン系薬,過量投与

(受付日:2012年4月3日)