臨床神経学

短報

前兆のある片頭痛・反復性めまい発作を合併した遺伝性出血性毛細血管拡張症の1例

米川 智, 土井 光, 立石 貴久, 田中 弘二, 井浦 とも, 大八木 保政, 吉良 潤一

Corresponding author: 九州大学大学院医学研究院神経内科学〔〒812―8582 福岡市東区馬出3―1―1〕
九州大学大学院医学研究院神経内科学

症例は29歳の女性である.12歳ごろより年に3回視覚性前兆のある片頭痛発作があり,20歳時に回転性めまい発作をみとめた.29歳時には言語性の前兆も視覚性前兆と同時に出現し,その頃に頭位性めまい発作がくりかえし出現した.舌や鼻粘膜などに毛細血管拡張を,左頸髄外側や左頭頂葉,両肺などに複数の動静脈瘻をみとめ,遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)と診断した.肺動静脈瘻にコイル塞栓術を施行後,片頭痛発作は減少した.HHTでは前兆のある片頭痛の合併が多いが,HHTを背景に頭位性めまいをも合併したことに言及した報告はなく,その病態を考える上で貴重な症例と考えられた.
Full Text of this Article in Japanese PDF (351K)

(臨床神経, 52:499−502, 2012)
key words:遺伝性出血性毛細血管拡張症,前兆のある片頭痛,回転性めまい

(受付日:2011年7月22日)