臨床神経学

症例報告

後頸部痛,両側外転神経麻痺を呈した頭蓋底斜台部原発悪性リンパ腫の83歳女性例

横手 顕1), 坪井 義夫1)*, 福原 康介1), 津川 潤1), 井上 展聡1), 青木 光希子2), 鍋島 一樹2), 継 仁3), 井上 亨3), 山田 達夫1)

Corresponding author: 福岡大学医学部神経内科学教室〔〒814―0180 福岡市城南区七隈7―45―1〕
1)福岡大学医学部神経内科学教室
2)福岡大学病院病理部
3)同 脳神経外科

症例は83歳女性である.約1カ月の経過で進行した両側外転神経麻痺と後頸部痛を主訴に入院した.頭部MRIで頭蓋底斜台部を中心に腫瘤性病変がみられた.全身検索で異常はみられず,経鼻経蝶形骨洞的腫瘍生検術を施行した.病理組織より悪性リンパ腫と診断し,ステロイドおよび放射線療法をおこなった.後頸部痛は消失し,頭部MRIで腫瘍の縮小をみとめたが,両側外転神経麻痺は残存した.頭蓋底斜台部原発の悪性リンパ腫はきわめてまれで,頭痛と外転神経麻痺の合併が多い.外転神経が脳幹部を出て,斜台硬膜貫通部から海綿静脈洞に向かい上行する部位,petroclival segmentにおいて,両側性に障害を受けることがその機序と考えられた.
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(臨床神経, 52:245−250, 2012)
key words:斜台部,diffuse large B cell lymphoma,後頸部痛,外転神経麻痺

(受付日:2011年8月10日)