臨床神経学

症例報告

両眼性の視力障害をきたしたMPO-ANCA関連肥厚性硬膜炎の1例

林 聖也, 菅野 直人, 西山 修平, 長谷川 隆文, 青木 正志

Corresponding author: 東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経内科学分野〔〒980―8574 仙台市青葉区星陵町1―1〕
東北大学大学院医学系研究科神経・感覚器病態学講座神経内科学分野

症例は79歳男性である.77歳時に顕微鏡的血尿,MPO-ANCA陽性を指摘され全身性血管炎の診断の下,ステロイドなど内服にて加療中であったが,右視力障害が出現し当科受診した.初診時は右眼耳側半盲のみであったが,左側頭部痛と同時に左眼視力低下が新たに出現した.頭部MRIでは,左側頭葉下面に硬膜肥厚と右蝶形骨洞内海綿静脈洞近傍に腫瘤性病変をみとめた.左眼の視力障害は多発暗点であり肥厚性硬膜炎による虚血性機転を考えたが,右眼に関しては一側の耳側半盲であり蝶形骨洞の腫瘤性病変による影響がうたがわれた.両側共にステロイドパルス療法に対し良好な反応をみとめたが,左右の視力障害の機序がことなると考えられる点が特徴的であった.
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(臨床神経, 52:152−155, 2012)
key words:肥厚性硬膜炎,MPO-ANCA,視力障害,半盲,ステロイド

(受付日:2011年7月5日)