臨床神経学

原著

てんかんのキャリーオーバーについての研究報告
―神経内科医師へのアンケート結果―

渡辺 雅子, 渡辺 裕貴, 村田 佳子, 谷口 豪, 岡崎 光俊

Corresponding author: 国立精神・神経医療研究センター病院精神科〔〒187―8551 東京都小平市小川東町4―1―1〕
国立精神・神経医療研究センター病院精神科

日本神経学会会員へてんかんのキャリーオーバーのアンケートをした.回答者の46%がこの用語を知っているが,78%がてんかん診療に困難を感じており,脳波判読の不慣れ,てんかんに特有の法律・医療福祉制度などの不慣れが主な原因であった.小児科からの20歳以上のてんかん患者の引き受け時に困難を感じた神経内科医は,引き受けを経験した医師の68%である.困難の主な理由は,小児期からの経過が把握しにくい,小児期特有のてんかん症候群に不慣れ,の2つである.以上から,キャリーオーバーの存在とその重要性を認識し転科を妨げる因子を解決するために,日本てんかん学会が,日本小児神経学会・日本神経学会などと連携活動をおこなうことが肝要である.
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(臨床神経, 52:730−738, 2012)
key words:てんかん,キャリーオーバー,難治てんかん,移行医療,専門医

(受付日:2012年2月3日)