臨床神経学

短報

多発性硬化症・視神経脊髄炎患者での頸静脈還流障害の検討

田中 正美1)*, 内炭 弘嗣2), 田中 惠子3)

Corresponding author: NHO 宇多野病院多発性硬化症センター〔〒616―8255 京都市右京区鳴滝音戸山8〕
1)NHO宇多野病院多発性硬化症センター
2)NHO宇多野病院循環器科
3)金沢医科大学神経内科

頭蓋内から体循環へもどる静脈の還流障害により中枢神経組織に鉄が沈着し,リンパ球が鉄に反応することで脱髄病変が生じるというZamboniらの多発性硬化症(MS)血管障害説を検証した.日本人MS17例および視神経脊髄炎(NMO)患者11例を対象に頸部エコーをもちいて内頸静脈の断面積および流速を測定した.断面積では両疾患に差異はみられなかったが,MS1例,NMO2例で血流障害をみとめた.今回の結果から,頸部エコー検査でみるかぎり,内頸静脈での静脈還流障害は,抗アクアポリン4抗体が病態に関与するNMOと比較してMSで顕著であるとはいえず,Zamboniらの仮説を支持する根拠はえられなかった.
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(臨床神経, 51:430−432, 2011)
key words:多発性硬化症,視神経脊髄炎,脱髄,慢性大脳脊髄静脈循環不全

(受付日:2011年2月1日)