臨床神経学

総説

脳梗塞とヘパリン起因性血小板減少症

山本 晴子1)*, 宮田 茂樹2)

Corresponding author: 独立行政法人国立循環器病研究センター研究開発基盤センター先進医療・治験推進部〔〒565―8565 大阪府吹田市藤白台5―7―1〕
1)独立行政法人国立循環器病研究センター研究開発基盤センター先進医療・治験推進部
2)独立行政法人国立循環器病研究センター病院輸血管理室

ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は,血小板減少を特徴とする免疫的機序による症候群で,発症頻度は低いものの,ヘパリン投与に合併して多彩な血栓・塞栓症をひきおこす重篤な疾患である.急性期脳梗塞治療の現場では,様々な血管内治療の開発にともない大量のへパリンが使用される局面が増加しつつあり,HITについての知識が求められている.急性期脳梗塞におけるHIT発症割合に関する報告はきわめて少ない.われわれの施設での後ろ向き調査では,HITの発生割合は0.5%と推測された.さらに多施設共同前向き調査の結果では1.7%であった.HITを発症したばあいの予後は不良であるため,HITがうたがわれたばあいには早急に治療を開始すべきである.
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(臨床神経, 51:316−320, 2011)
key words:ヘパリン起因性血小板減少症,脳梗塞,血栓塞栓症

(受付日:2011年1月31日)