臨床神経学

症例報告

Pattern reversal VEPにて視神経炎が示唆されたリンパ球性下垂体炎の1例

斎藤 聡, 森 千晃, 當間 圭一郎, 久堀 保, 西中 和人, 宇高 不可思

Corresponding author: 住友病院神経内科〔〒530―0005 大阪市北区中之島5―3―20〕
住友病院神経内科

視力低下と汎下垂体機能低下をみとめ,造影MRIにて下垂体および下垂体柄に腫脹と異常濃染がみられたことから,リンパ球性下垂体炎(LYH)と考えられた一例を経験した.本例では視力低下に加え,Pattern reversal VEPにてP100頂点潜時の左右差と振幅の低下をみとめた.潜時の延長にくらべ振幅の低下が重度であったため,多発性硬化症などでみられる自己免疫性の脱髄性視神経炎は否定的であり,下垂体炎が視神経まで波及し,視力障害が生じたと考えられた.副腎皮質ステロイド薬にて視力は回復し,VEPの異常も消失した.LYHでは視神経病変の評価にVEPが有用である可能性が示された.
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(臨床神経, 51:27−31, 2011)
key words:視覚誘発電位,P100,潜時,リンパ球性下垂体炎,視神経炎

(受付日:2010年5月15日)