臨床神経学

症例報告

経時的にMRIを施行した脳脂肪塞栓症の1例

本田 省二1)*, 稲富 雄一郎1), 米原 敏郎1), 橋本 洋一郎2), 平野 照之3), 内野 誠3)

Corresponding author: 熊本大学医学部附属病院神経内科〔〒860-8556 熊本市本荘1-1-1〕
1)済生会熊本病院脳卒中センター神経内科
2)熊本市民病院神経内科
3)熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野

症例は16歳,女性である.交通事故で当院に搬送された.搬入時には意識清明であり,その他神経学的に異常なく,頭部CTで脳実質は正常であった.左大腿骨骨幹部骨折,軽度の左肺挫傷をみとめ,来院約2時間後に全身麻酔下に左大腿骨骨折部のデブリドマンと鋼線牽引術を施行した.術後麻酔からの覚醒が悪く,意識レベルが徐々にJCS III-100まで低下.来院約36時間後の頭部MRI拡散強調画像(DWI)で,両側大脳白質を中心にびまん性かつ散在性の高信号域をみとめ,脳脂肪塞栓症と診断した.DWI異常像は3週後にはすべて消失し,症候も緩やかに改善した.頭部MRI-DWIは診断と病態把握に有用であると考える.
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(臨床神経, 50:566−571, 2010)
key words:脳脂肪塞栓症,脂肪塞栓症候群,骨折,MRI,拡散強調画像

(受付日:2010年2月16日)