臨床神経学

総説

神経疾患におけるiPS細胞研究の現状と展望

伊東 大介, 八木 拓也, 二瓶 義廣, 吉崎 崇仁, 鈴木 則宏

Corresponding author:慶應義塾大学医学部神経内科〔〒160-8582 東京都新宿区信濃町35〕慶應義塾大学医学部神経内科

2006年,Takahashiらにより発表された体細胞の初期化法は,数個の遺伝子導入により胚性幹細胞に匹敵する多分化能を有する人工多能性幹細胞を作成することを可能にした.このiPS細胞は,拒絶反応のない再生医療への応用が可能になるとして大きな注目を集めている.一方,神経疾患の研究においては,これまで生体よりの入手が困難であった疾患組織をiPS細胞から多量に作成することが可能となり,病態解明,創薬などに飛躍的進展をもたらすと期待されている.本稿では,神経疾患におけるiPS細胞研究の現状を概説し,病態解明,再生医療への可能性について論じる.
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(臨床神経, 50:449−454, 2010)
key words:iPS細胞, 神経変性疾患, 胚性幹細胞, 再生医療

(受付日:2010年3月18日)