臨床神経学

総説

傍腫瘍性神経症候群と抗神経抗体

田中 惠子

Corresponding author:金沢医科大学脳脊髄神経治療学(神経内科学)〔〒920-0293 石川県河北郡内灘町大学1-1〕金沢医科大学脳脊髄神経治療学(神経内科学)

悪性腫瘍患者には様々な神経障害が合併するが,自己免疫学的機序により生じると考えられる一群が傍腫瘍性神経症候群であり,多くは腫瘍の発見に先んじて発症する.神経症状発症早期から,病型と関連して血清および髄液に特徴的な自己抗体が検出され,本症の診断・悪性腫瘍の早期発見マーカーとして有用と考えられる.現在も様々な手法により,新たな診断のマーカーとなる抗体の検索が進められており,最近,NMDA受容体抗体,電位依存系カリウムチャネル抗体をともなう病型などが明らかになった.また,抗原の局在と治療反応性,予後との関連にも一定の特徴がみられることが明らかになってきている.
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(臨床神経, 50:371−378, 2010)
key words:傍腫瘍性神経症候群, 自己抗体, 細胞傷害性T細胞, 細胞表面抗原, 細胞内抗原

(受付日:2010年3月9日)