臨床神経学

症例報告

生体腎移植後にHTLV-1関連脊髄症を発症した1例

猪瀬 悠理, 秋山 茂雄, 望月 温子, 清水 優子, 岩田 誠, 内山 真一郎

Corresponding author:東京女子医科大学神経内科〔〒162-8666 新宿区河田町8-1〕東京女子医科大学神経内科

症例は51歳男性である.生体腎移植10カ月後より歩行障害と感覚障害が出現し10年の経過で進行性の痙性対麻痺と排尿障害を呈した.腎移植前には陰性であったHTLV-1抗体が血清と髄液HTLV-1抗体陽性でありHTLV-1関連脊髄症(HAM)と診断した.ドナー腎のHTLV-1抗体検査が未施行であるが,移植腎からの感染の可能性がうたがわれた.インターフェロン-αで治療し,運動機能改善と髄液ネオプテリン低下をみとめた.本症例の特徴は,生体腎移植後の発症,移植後の免疫抑制薬はシクロスポリンとメチルプレドニゾロンを使用,献腎移植後にHAMを発症した症例と比較し発症までの期間が短いことである.腎移植後のHAM発症とその要因については今後の検討が必要であると考えられた.
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(臨床神経, 50:241−245, 2010)
key words:HTLV-1関連脊髄症, 腎移植, 免疫抑制薬, ネオプテリン, インターフェロン-α

(受付日:2009年7月23日)