臨床神経学

症例報告

両側視床病変を呈した硬膜動静脈瘻の1例

山本 隆広, 渡邉 聖樹, 三浦 彰子, 平原 智雄, 平野 照之, 内野 誠

Corresponding author: 熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野〔〒860―0811 熊本県熊本市本荘1丁目1―1〕
熊本大学大学院生命科学研究部神経内科学分野

症例は51歳の男性である.2カ月前より頭痛,活動性の低下,見当識障害が徐々に進行し当科入院した.頭部MRIT2強調画像にて両側視床に高信号域をみとめ,左傍中脳に静脈の拡張と思われるflow voidをみとめた.脳血管造影にて,左上錐体静脈洞部に硬膜動静脈瘻をみとめた.流入動脈は内頸動脈が中心であり,流出静脈は深部静脈系へ逆流していた.このため両側視床の灌流障害をきたしていると考えられた.主な流入血管に対し経動脈的塞栓術を施行したところ見当識障害と視床病変の改善がえられた.硬膜動静脈瘻は両側視床病変の原因となることもあり,治療介入で改善が期待できるため,早期診断が望ましい疾患である.
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(臨床神経, 50:718−724, 2010)
key words:硬膜動静脈瘻,視床,上錐体静脈洞

(受付日:2010年7月9日)